4章 太陽神の裁き

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・ 咄嗟の出来事に悲鳴すら間に合わず愛美はそこへダイブする。 豪快に水飛沫を上げ、湯の底に沈んだ躰でもがくと愛美はここへ来て始めて声を発した。 「なんなのっいきなりっ──」 叫んだ愛美の声を掻き消すように湯船に飛び込んだザイードの水飛沫が立ち上がった。 いきなりはこの男の常套手段だ── だがこれは余りにも酷すぎる。 溺れ掛けた顔から水を拭い、不自由な水中でやっと体勢を整えて底に足を着いた愛美を傍まで来たザイードは突然強く抱き締めていた。 「……なっ…」 「さっきの顔はなんの真似だっ…」 は?── 急に問われて愛美は目を見開き動きを止めた。 抵抗する言葉も遮られ、湯の中でがむしゃらに掻き抱かれる。 愛美は驚いてザイードの顔を見つめ返した。 二人して呼吸が荒い。衣服を纏ったままその布は濡れて躰に張り付いている。 ザイードは透ける愛美の乳房に噛み付くように吸い付いた。 「ああっ…やっ…」 愛美は唇を結んで声を堪えていた。ザイードはそこから顔を上げて愛美を見つめる。 「さっきの表情はなんだっ…」 「……っ…」 何を言いたいのかさっぱりわからない── ただ、そう言って追求してくるザイードの目差しがあまりにも熱くて… 繰り返し肌に強く押し付けられる唇にとてつもない疼きを感じて… 強引に抱き締められていた筈の愛美の腕はザイードの広い背中に自然と巻かれ絡み付いていた。
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