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背中に回った愛美の腕に、微かにぎゅっと力が込められる。ザイードはそれに気づいた──
細い肩から伸びる両腕、それを掴み巻きついた自分の背中から剥がし取るとザイードは愛美の頭上でその両手首を捕える。
まるで何かで裁かれる罪人のように吊るされて、そんな愛美を見つめるザイードの表情は苦し気に歪んでいた。
水飛沫を浴びて濡れた漆黒の髪から雫が滴り褐色の肌を水滴が伝う。
ザイードは急いたように荒がう肩で息をきると捕らえた愛美の手先に口付けた──
唇を押し当てながら桜貝のような小さな爪に視線を落とす。
指先の色の白さに薄いピンクが愛らしく映えている──
ザイードは驚いた表情のままの愛美の瞳を間近で見つめた。
「これ以上俺を狂わすな──っ…陽の神が頭上にいる刻の情交は神への冒涜に値するっ…」
「……っ…」
言った傍からザイードの熱い唇が愛美の呼吸を遮った。
抑えきれない──
そんな熱を持つ肉厚な舌が愛美の口腔を舐め回す。犯すように回遊するそれに愛美は溺れそうな息を漏らし頬を上気させた。
「ああっ…熱っ…」
高温の熱病に侵されたように頭が朦朧とする。
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