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放牧から柵に戻ってきた山羊達の鳴き声が暮れかけた空に響いていた。
敷地内にある色とりどりのテント。その中に一つだけ真っ黒な暗幕一色の家屋が目立っている。
その周囲には眼光を光らせた数人の男達が見張りに立っていた。
「次の予定をそろそろ決めていかねばならんな」
若くしてこの集落を治める男の言葉に周りの者達が頷いた。
黒装束で頭から全身をすっぽり覆う者、鮮やかな色に染め上げた布を腰に巻いた者、様々な姿の男達が寄り集まり絨毯の床に腰を降ろして胡座をかく。
「アレフ、首都で何か新しい動きがあったか聞いているか?」
奥に腰を据えていたザイードに尋ねられ、アレフは手にしていた紙の束を捲った。
「大量のアヘンが近々、中国から入ってくる以外はとくに大きな動きは見られんようですな…」
ザイードはアレフの話を聞いて顎に手を添えた。
天井から吊るされたランプの灯りが眉をしかめたザイードの表情に影を落とす。
「アヘン……か」
ザイードは小さく呟いた。
「確か、前回のザビアでは大量の拘束具が売り捌かれていたな──」
「ええ、珍しい枷が手に入ったとターミル殿も言っておられましたが……」
アレフは言いながらターミルにちらりと目を向けた。
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