4章 太陽神の裁き

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めし獲った獲物を貪り喰う。 黒くバネのある躰をしならせて動く姿はまさしく野性の黒豹── 「…マナミ…っ」 ただ一つ── 躰を重ねる度に変わってきたことと言えばこの名前を呼ぶときの声だ。 愛美は躰をまさぐられながら名前を熱く呼ばれ、胸を疼かせる。 言葉は何一つなくともこの名前を呼ぶ声音に熱い何かを感じてしまう── 愛美はその度に心身の奥から沸き上がる複雑な快楽に困惑していた。 ザイードは昨夜、珍しく長い時間この寝所を離れどこかに行っていた。久し振りに一人、自由になり、愛美はふとザイードが枕元に置いていった小さな湾刀に目を向けた。 一人にしても絶対に逃げ出さないと思っての事なのだろうか── わざわざ刀を置いていくザイードの真意は掴めない。 もしこの剣を手にしてあたしが刃向かっていったらどうするのか…… 勿論、返り討ちに合うのが関の山ではあるがもし喉元を一瞬でかっ斬ってしまえばどうなのだろう── そこまで考えていない筈はない…… なんせ盗賊の頭だ。 常に身の危険と言うものは頭の隅に置いている筈。
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