4章 太陽神の裁き

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・ 陽はまだそんなに高くはない── 起きろと言いつつたっぷりの情交を迫ってきたザイードにぐったりさせられながら、愛美はラクダに揺られていた。 朝早く集落を発ったのは容赦なく照り付ける太陽を懸念してのことだ。 この地の者は日中にあまり行動を起こすことはない。陽が射す中でやたらに動くのは無駄に身体を痛め付けるだけだ。 一日の作業は朝か夕刻と集中して行われる。暖かい土地の者はノンビリだと言われるが、活動時間が限られているせいか、ここの者達の動きは以上な程に迅速だ。 熱すぎるせいかせっかちな者も多い── 「ここで休んでいこう」 睡眠不足の躰にラクダの揺れが堪える。少々くたびれ掛けた愛美をみてザイードは途中の集落で足を止めた。 「はいよ!」 活きのいい声と共にボロボロの狭いカウンターにコップがドン!と置かれる。 勢いついたお陰でたっぷりに注がれたコップからは中身がかなり溢れてカウンターを汚していた。 日本ではあり得ない荒っぽさだ。 「チャイだ、飲め」 ザイードに言われて愛美は恐る恐る口を付けた。
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