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ちはるはまぶたの裏に焼きついた去り際の暁の姿を打ち消すように、夜ごと降ってくるような空を見上げた。 東京とは違い、息もつけなくなるほどの星の量に涙がこぼれ落ちる。 胸の奥からせりあがる感情に揺さぶられてとまらない。 瞬く星々の間に吸い込まれて、二度とこの世界に戻れなくなってもいいと思うほどに、ちはるは自分の心を引き裂いて捨ててしまいたかった。 その時、視界に広がる南の空に一瞬だけ線が走った。ハッとしたちはるは、やぎ座の方角を探して、目をこらす。 「あ、」と小さく声をあげたと同時に、流星が落ちるように流れた。ちはるはリゲルのことを思い出す。そして音高合格を祈るように、果てしなく広がる夜空に手をのばす。 のばして、のばして、きっと祈りは届くと錯覚したかった。 人工の匂いを吐き散らす高層ビルもネオンもない長野の星空は、どこまでも暗く美しい。 指先の向こうでやぎ座の流星が長く短く現れては消える瞬間を繰り返し見つめながら、ちはるはいつのまにか頬を流れた涙が乾いていることに気づいていた。
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