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サークルのペルセウス座流星群観測会を終えた帰り、上りの電車の中は空いていて、時間も遅いせいかサークル仲間の多くが頭を揺らしていた。
規則正しく刻む電車の音に身体の呼吸が合わさっていくように感じていた心地よさは、手紙を読み進めるうちに感じなくなっていた。
むしろペルセウス座流星群に真剣にリゲルの音高合格を願った気持ちが、行き場をなくして息苦しい。
〈……公園がなくなるって思いませんでした。ちはるさんは知っていたんですか? ぼくはこのまま手紙をやりとりできなくなってしまうのは嫌なので、新しい場所を探して見つけます。それまで……〉
眉根を寄せて、ちはるはリゲルの手紙に小さなため息をついた。
公園がなくなる時、リゲルとのやりとりも終わる。だからあえて手紙の中で公園の閉鎖には触れなかった。
中学3年生の男子が、滑り台の穴に代わる新しい場所を探し出してまで手紙のやりとりを続けたいと思っているとは想像もしていなかった。
「何、難しい顔して読んでるの?」
ふいに隣で眠っていたはずの悠輔の声が顔のすぐ脇から届いて、ちはるは大きく身体を跳ねさせた。その驚きぶりに悠輔はちはるの反応に喜ぶ笑い声をあげた。
「手紙です」
「手紙? このご時世に?」
言いながらのぞきこもうとする悠輔の目から、ちはるは手紙を隠す。
「まあ、そう言われたらおしまいなんですけど……。でも手紙ってすごく相手の心に寄り添える気がして、好きなんです」
「へえ……ちはるちゃんらしいね。で相手、誰?」
「え? まあ、それは秘密にさせてください」
「えーあやしいなあ。男だろ」
「ち、違います。けど違くない、というか、」
「何その歯切れの悪さ。友達スタートのオレにその仕打ちしちゃう? ちはるちゃん、ドS?」
「そういうんじゃ……」
「いい! ドSちはるちゃんでも、悠輔、気持ち変わらないっ!」
「もう先輩、おもしろがってるでしょ!」
おおげさにしなをつくってふざける悠輔に、目を覚ました幾人かのサークル仲間がつられて笑う。
ちはるは悠輔に、恋人からではなく友達から始めたい旨を伝えていた。それを受け止めて、ちはるに気を遣わせまいとする悠輔の大きな優しさが、隙間風に震える心を包む。その自分を自覚するたび、リゲルの手紙にのぞいた必死さもまた、際立って見えていた。
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