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「それは、私だって……。でも、でも卒業したら私、こっちに帰るつもりだし、それまで」
「不安なんだ。ちはるは気づいてないかもしれないけど、東京に行ってどんどんキレイになった。同窓会でもちはるのこと気にする奴とかけっこういて、そんなちはるが東京の大学で、とか考えると……」
暁は音をたててまわったグラスの中の氷に視線を落とした。
「オレ、このままじゃどんどんかっこ悪くなる。そういう自分も嫌だし、……別れとか考えるのも嫌で……ならいつのまにか自然消滅してた方が楽なんじゃないか、って」
「そんなの、そんなの勝手だよ……!」
ちはるの押し殺した声に、暁が唇の端をかすかに歪める。
「……そうだよな、ごめん。はっきり、させたくなかった」
一人だけいた男性客はいつのまにか店を出て、バックヤードに下がったのかカウンターの中にはマスターの姿も見えない。
「……でも昨日、話があるから会いたいって言われた時、ようやく決心した」
「……嫌」
ちはるは聞きたくないと、俯いて小さく頭を振った。
「ちはる」と暁がいつもより優しく名前を呼んだ。
「嫌、こんなの」グラスの足を握りしめるようにしているちはるの手に、暁が遠慮がちに触れた。
「弱すぎだよな、オレ。離れてもやってけるって、最初は自信あったんだけど、いつのまにか分からなくなった……」
「暁くん」
「……ごめん、別れよう……」
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