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ケーキを食べ終わると、夫はどこからか出してきたワインをあけた。
そしてテーブルにワイングラスを二つ置いた。
「少しくらいいいだろう。沙織の誕生日なのだから」
・・・なんで沙織の誕生日とワインが関係あるんだ、という言葉がノドもとまで出掛かったが、
それを言うと沙織が泣き出しそうなので我慢した。
隆志は二つのワイングラスに豪快にワインを注いだ。
ゆかりの顔がひきつった。
「誕生日おめでとう」
隆志がワイングラスを沙織の顔の前に差し出した。
ゆかりは少し遅れてから同じようにワイングラスを持ち少しだけ口に含んだ。
―うまいー
ダイエットをはじめてから初のアルコールだ。
体中にアルコールが染み渡る。
ゆかりの体の力がいっきに抜けた。
それでも頭の中には「ダイエット」の文字が浮かんでいる。
ケーキは一口で我慢したが、沙織がフルーツだけ食べてタルトを残していので、
捨てるのにはもったいないと心の中で言い訳をしながら、そのタルトをたいらげた。
アルコールと一緒にエアロバイクが頭の中で猛烈なスピードで回転した。
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