王宮を抜ける風

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「無礼な…!セルズ国王であらせられる我が君の招き、断るならばアルシュファイドには相応の対応をとらせていただくことになるぞ…貴公に責任がとれるのか!」 「とれる。そもそもアルシュファイドはセルズに対してなんの負い目もない。それをなんの権限をもとに馬車を止める」 「重ね重ね無礼な!王権を侮辱するか!」 イルマが口を挟んだ。 「我らがアルシュファイドの守護の要、風の宮公に対して、あなたこそ無礼ではないのですか」 男は目を白黒させた。 サリは、どうしたらいいか判らない。 そのときグレンが来て言った。 「アルシュファイド王国国格彩石判定師御一行は急ぎの旅であられる。国王陛下にはその旨、お伝えしてはくれまいか」 男は、ふん、と鼻息を(あら)らげた。 「このように無礼な態度で今さら…とにかく、逆らうならば、力ずくでも連れていくまで…!」 男は連れてきた兵士たちに合図をし、一行を取り囲んだ。 騎士たちの手が剣に伸びる。 グレンが眉根を寄せる。 外交上、好ましくないどころか、横暴ですらある。 ギルドメアが口を開いたが、言葉が発せられる前にミナが言った。 「お招き、ありがたくお受けします。どちらへ参ればよろしいですか」 「ミナ、やめろ」 デュッカが言ったが、ミナは撤回しなかった。 男は頷いたが、不満そうにミナを見た。 「王宮へ招く。馬車を降りよ」 デュッカがミナの腕を掴んだ。 「俺も行く」 「わたくしも…」 サリに首を振って見せ、ミナは言った。 「王宮までは馬車があるので、不便はありません。ご配慮ありがとうございます。グレンさん、馬車を王宮へ」 男が言った。 「では案内する。ついてこられよ」 「ミナ…」 心配そうに呟くグレンに、ミナはちょっと笑ってみせた。 「国境まで、まだ遠い。一応は、努力してみないと」 グレンは何か言いたそうだったが、男に()かされて客車扉を閉めた。 一行は、兵に囲まれるようにして王宮に着き、ミナはサリとイルマを残して馬車を降りた。 ムトが来て言った。 「俺も行こう」 ミナは首を横に振った。 「デュッカがいるから大丈夫。それより、」 ミナは言葉を切って、ムトの耳に口を寄せた。 「逃げる準備しといて」 ムトは頷き、よろしく頼むとデュッカに言った。 ミナとデュッカは男に導かれるまま宮殿内に入り、謁見の()に入った。 そこには多くの臣下がいて、今朝まで世話になっていた、ダヌカノイもいた。
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