ヴェヅネッカ

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ヴェヅネッカ

ミナの目が覚めたとき、部屋には誰もいなかった。 ミナは意識が途切れる前のことを思い出し、重い体を動かした。 起き上がって床に足をつけ、立ち上がろうとして倒れた。 すぐに寝室の扉が開くと誰かが入ってきて、起こされて見るとデュッカだった。 「デュッカ…」 「力を使うな」 「でも…」 気持ちが(あふ)れる。 あなたのせいじゃないのに。 もどかしい。 異能を使っても伝えられる気がしなかった。 デュッカは慎重にミナを寝台に戻すと、手の届かないところへ距離をとった。 「食事はできるか」 ミナは首を横に振った。 「水は飲めるか」 ミナは答える代わりに喉を鳴らした。 「力を使うなと…!」 ミナは天井を見ながら言った。 「水なら平気です」 デュッカが荒い息を吐いた。 また怒らせてしまったらしい。 だがミナは、それについて何も言わなかった。 ただ、目を閉じて開いてから、宣言した。 「すみません。寝ます」 その言葉とともに、ミナは深い眠りに入った。 再びミナが目を開けたのは部屋が暗くなってからだった。 そんななかでも、外からの月明かりでぼんやりと、知らない部屋にいることが見て取れた。 ふと横を見ると、デュッカが椅子に座って寝ているようだった。 ミナは起き上がって床に素足を下ろし、寝台に座った。 そうしてしばらくずっとデュッカを見ていた。 やがて慎重に両足に力を入れ、立ち上がる。 靴を履かずに荷物のところに行き、開けてみた。 「…何をしている」 ミナはちょっと振り返って、言った。 「お(なか)()いたから食べるものないかと思って」 デュッカが溜め息をついた。 「運ばせる」 「いいですよ、あったから」 ミナはお菓子の袋を取り出して言った。 そして迷った。 どこで食べよう? 初めて見る部屋だが、なんとなく、扉の向こうは廊下ではなく、居間になっている気がした。 ミナは思い切って手近にある扉を開ける。 そこはランプの灯りがやさしい、明るい居間だった。 ミナは寝室を出て居間の椅子に座り、お菓子を食べた。 焼き菓子で、甘くておいしい。 「うまいか?」 寝室の扉に立つデュッカが聞いた。 この距離が悲しい。 「おいしいです」 ミナはお菓子を食べながら、急激に悲しくなった。 ぽとぽと涙を(こぼ)しながらお菓子を食べた。 やがて食べ終わるとデュッカが声をかけてきた。 「なにを泣いている」
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