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言う声が先ほどより近くなった。
ミナは指で涙を拭ったが、あとからあとから流れてくる。
ミナは流れるにまかせることにした。
「よくわかりません」
「泣くな」
「止まりません」
デュッカが隣に座った。
左の頬に触れて親指で涙を拭う。
それからミナの頭を抱き寄せて言った。
「泣くな」
ミナはデュッカにしがみついて大声で泣いた。
デュッカはもう何も言わず、ミナを抱きしめてくれた。
やがて泣き終えたミナにデュッカは聞いた。
「なぜ泣いた」
ミナは目を瞬かせて聞いた。
「もうあなたの力を使ってはいけませんか」
デュッカは目を眇めて言った。
「二度とやるなと言った」
「でもそばにいたらきっとまたやります」
デュッカは沈黙した。
ミナは黙って待った。
しばらくしてデュッカは言った。
「どうしてもか」
「どうしても」
デュッカは溜め息をついた。
もう一度頭を抱き寄せて、ミナの頭の上で言った。
「しようのないやつめ」
それから離れ、デュッカはミナの涙のあとを拭いながら言った。
「やる前に言え。倒れられてはかなわん」
そうして今度はミナの首から頭を抱き寄せて、ミナの耳の後ろで溜め息をついた。
「仕方ない…」
惚れた弱味だ。
力を使わせないために離れることを考えるのもいやだし、自分に与えられるものはすべて与えたいのだ。
デュッカはやがて身を起こした。
「食事するか?」
ミナは少し考えた。
「その前にお風呂入りたいです…」
「わかった、彩石湯を張らせる。少し待て」
そう言って風に言葉を乗せた。
少しして扉の外が騒がしくなり、サリとイルマとセラムとパリスとムトが入ってきた。
デュッカは眉を寄せてパリスに聞いた。
「石は持ってきたのか」
「持ってますよ!それより大丈夫なんですか…」
ミナはちょっと笑って言った。
「うん、ごめん。大丈夫。彩石湯張ってくれる?」
「喜んで!」
パリスが浴室へ飛び込んでいき、サリが近付いてミナの手を取った。
「よかったですわ。あれからずっと気を失ったままで…お医者さまは、あとは時間が必要だと仰るばかりで…」
「うん。もうちょっと休まないとだめみたい。ごめんね」
「まあ…」
デュッカがセラムに言った。
「食事を部屋に持ってこい」
セラムが部屋を出ていき、ムトが言った。
「それで。何があったんだ?」
ミナが困ったように笑って言った。
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