ヴェヅネッカ

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「ごめんね。思ったより力使っちゃって」 「何に使ったんだ」 「えっと…解呪」 「解呪?」 ミナは頷いた。 「セムネスティさまに操りの術がかけてあって。土と火の力を使って(じゅ)()いたの」 「解呪なんて誰に教わったんだ?」 ムトを見て、ミナは言った。 「結果的に解呪になっただけで、私はいつもと同じことをしただけだよ。石の力を読んで、不自然なところを正した。今回は言葉を使わなかったから、その分、負担になったんだと思う。土と火の力を目一杯使って要所を(ほぐ)して、無力化したんだよ」 サリが言った。 「まあ…それでお医者さまが均衡が崩れていると仰いましたのね…」 「とにかく、このことをアークに早く知らせて、対策とってもらわないと、またセムネスティさま操られちゃうから、」 言いかけるのをムトが遮った。 「わかった。こちらで知らせておく。ほかになければ俺たちは出よう。ゆっくり休んでくれ」 「ありがとう」 「ミナ、準備が出来た。入ってくれ」 パリスが言い、ミナは微笑んだ。 「ありがと」 ミナは支度をしに寝室に入り、ほかの者たちは外に出た。 廊下にはグレンが来ていて、どうだった、と聞いてくる。 「ひとまず大丈夫だろう。アークにこのことを知らせる。グレン、滞在を延ばせるだろうか?」 ムトの言葉に、グレンが返す。 「いくらでも…とは言わないが、大丈夫だ、宿の(あるじ)に話してくる。どのくらい延ばす?」 「それはミナ次第だ。国境封鎖されては身動きとれない。早く帰らねば」 「分かった。では延ばす手配だけしておく」 「頼む。デュッカ、手紙を送る。一緒に来てくれ」 そう言ってムトは騎士たちの元に戻り、イルマとパリスは部屋の前に陣取った。 サリは心配だったが、自分もカィンに手紙を書かねばと部屋に戻り、大急ぎで書き終えた。 翌朝、アークからの手紙で、セムネスティに対してそれと判らぬ護衛を付けた旨の手紙が届き、ミナは胸を撫で下ろした。 「これで国境封鎖はなさそうだね」 ムトは慎重に言った。 「どうかな。操られていたのが事実にしても、操ったやつのことは判らない」 「あの場に術者がいなかったのは確か。とにかくあとは、アークとセルズの中央政府に任せるしかない」 ミナの言葉に納得するしかなく、一行は予定通りヴェヅネッカに3泊することになった。
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