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ミナはまだ動けないということで、サリは世話を焼きたい気持ちだったが、ミナは言った。
「町の様子を教えて。明日、一緒に回ろう」
そう言われ、不承不承出掛けた。
ヴェヅネッカ中心部の街も、人々は明るく、暮らし向きはいいようだった。
サリは宿の部屋に置いてきてしまったミナのために、シャクラという甘味を買った。
これは、ふわふわの薄い生地のなかに、甘く黄みがかったとろりとした餡が入っており、気を付けて食べないと中身がこぼれてしまうものだ。
サリは明日、ミナを案内するために、リザウェラたちと歩き回って、町の様子を頭に収め、15時頃宿に戻った。
すると、ミナのところにはセルズ王国中央政府の者が来ているということだった。
「まあ…ミナは疲れていますのに」
サリは呟いて、シャクラを持ってミナの居る部屋に入った。
「ミナ、おみやげですわ」
言いながら入ると、セルズ王国中央政府の者と思われる男が3人、ミナの向かいの長椅子に座っていて、ギルドメアがその傍らに立っていた。
デュッカはミナの隣で、面白くなさそうな顔をして3人を見ている。
「おかえり。明日行くとこ決まった?」
「ええ、わたくし、町を案内できますわ!ところでその方たちは…?」
ミナは1人ずつ紹介した。
「セルズ王国中央政府結界管理部の部長さん、ギルドメアさんの直属の上司だよ…ミズガルド・タルラさん、危機管理庁長官、ハルノア・デスリさん、王宮外務調整庁長官、ウルトイ・ガストールさんだよ。皆さん、あちら水の側宮、サリ・ハラ・ユヅリ。水の宮公の公務代行を行う方です」
3人は立ち上がって挨拶した。
「サリ、座って。…今言ったように、私は封印、解呪といった作業を多く扱っているわけではありません。昨日は、とにかくティターヌを出るために必要だと思ったので行いましたが、可能であれば、経験豊かな方に、術師の捜索を依頼するのがよいかと思われます。滞在期間を延ばせず、心残りではあるのですが…」
ハルノアが言った。
「とんでもない、それだけでも充分です。あとはこちらで対処します」
「お願いします。あと、クオラさまですが、情け深い方です。国民のためになる政策をと考えておられるでしょう。まだ若いかもしれませんが、誰かの後押しがあればきっと、お力を示してくださるはず」
ウルトイが頷いて言った。
「私もそのように見受けましたが、しかし中央政府だけでは…」
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