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四方を白い外壁の建物群が囲い、中心部には、鋭い尖塔が林立していた。
それは、騎士の凛とした姿に似て、でもやわらかな鳥の子色の外壁と、薄青色の屋根が、どこか親しみを感じさせるのだった。
尖塔の先を振り仰いだふたりは、一般に公開されている建物内を見て歩き、そのまま街へ出て食堂で昼食を摂ることにした。
多くの店が、灰を除いた店先に机と椅子を並べ、外で食事できる幸せを感じられる場所を、客たちに提供していた。
町並みの多くは白っぽい外壁に、黄櫨染色の屋根が多く使われていて、似た建物が多く、サリたちは道に迷いながらも楽しく過ごした。
その日の夕食は、ギルドメアと別れるというので、宿に少々、酒を多めに出してもらった。
ギルドメアは言った。
「両親たちがピクトリノに戻るそうです。家は荒れているでしょうが、それでも帰れる家があれば言うことはないと。久し振りに両親たちの晴れやかな笑顔を見ました」
「ああ、それはよかった」
サウリウスが言った。
自分の両親もサールーン王国に戻りたいと、いずれそんな決断をするのだろうかと考え、杯を傾ける。
「姉も義弟もこれについていくと。妻とも少し話しています。家をピクトリノに置いてはどうかと…単身赴任は辛いですが、両親の近くが妻もいいのでしょうし」
「お嫁さん美人かい?」
アニースが横から口を挟む。
ギルドメアは照れくさそうに頭をかいた。
「ええ、まあ、美人です」
「はっきり言うなあ!悪くないよ、その返し!お子さんはいるんだっけ?」
「ええ、娘が1人、これがまたかわいくて…」
そんな具合に送別の酒宴は更け、ギルドメアは明日朝、見送りに来ると言って帰った。
翌朝、サリたちが出発のために宿の玄関広間に集まると、ギルドメアのほかに、ミズガルド、ハルノア、ウルトイが見送りに来てくれていた。
「…では、政王陛下によろしくお伝えください。我々、必ずご期待に応えてみせます」
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