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「はい。国民にとって、よい結果となりますように…それでは失礼します」
ミナが答え、馬車に乗る。
それから一行は、ヴェヅネッカを離れ、南下して西セルズ側国境の町、ハクラに向かった。
ハクラの城は、カィンに聞いた通り、白黒の縞模様が入った円塔が連なっていて、窓を通してでも充分楽しめた。
その模様は、白い石と、黒い石を、交互に重ねて作られたもので、そのための人々の労苦にも、感心するのだった。
サリとミナは、ちょっと立ち寄りたかったが、ティターヌでのこともあり、何よりキョートルの門限が迫っていたため、諦めるよりなかった。
陽が落ちる前にハクラの国境門に着いた一行は、グレンの持つ書状により、すんなり通してもらえた。
サリは、ここから帰り道になるのだなと、少し寂しく思った。
いろんなことがあったけれど、楽しいことがたくさんで、どことなく離れ難いのだ。
だが、それ以上に、アルシュファイド王国にいるひとたちのことが思い出されてならない。
みんな今頃、何をしているのだろう?
そんな思いを乗せながら、馬車は国境門をくぐる。
こうして一行は、城と森と湧き水の国、セルズ王国をあとにしたのだった。
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