10人が本棚に入れています
本棚に追加
歓迎
レア・シャスティマ王国のキョートルに入ると、町がざわめいたようだった。
不審に思いながらも宿に入って旅装を解くと、宿の主が話してくれた。
皆、彩石判定師一行の噂をしていると。
「結界修復だけでなく、東西セルズにいた賊どもを退治しなさったとか、いや、なかなかできることではない」
ミナは言った。
「すべて協力してくださった方々のお陰です。東セルズの王、クオラさま、そのほかの領主さま方、西セルズの領主さま方、それにヴェヅネッカの中央政府の方々もご尽力くださいました。西セルズの王さまも、おかしな術をかけられていなければ、きっとお手を貸してくださったでしょう」
「なんと!おかしな術とは?」
「操りの術です。誰の所業かまでは突き止められませんでしたが、とにかく、いつ頃からか、西セルズは何者かに操られていたのですね…」
この話は瞬く間に広まった。
翌日、アカッテに着くと、一行は大きな歓声に包まれた。
サリたちが驚いて馬車の窓の外を見ると、沿道に人々が集まっていて、サリたち一行を笑顔で迎えてくれているのだった。
サリとミナは少々恥ずかしく、しかしそれだけ人の役に立てたことが、嬉しくもあった。
復路も、往きと同じ黒く背の高い宿で、部屋も同じく広く、居心地がいい。
宿に着いたのは昼前だったので、手紙でカィンに教えてもらった店で昼食をいただき、灰避けを取り払った多くの店を覗いて回り、ミナたちは、たくさん、お土産を買った。
翌日、また店巡りをしていると、ある会話が耳に入った。
ティターヌの王宮に民衆が詰めかけ、声を合わせて叫んだそうだ。
王様を解放しろ、国政を中央政府に一任しろ、と。
すると、セムネスティが出てきて国民に約束したそうだ。
しばらく国政を中央政府の手に委ねると。
その証として、委任状を携えた使者をその場で送り出した。
ミナはこの話に耳を傾け、にっこり笑った。
「どこまで読んでる」
やや不機嫌ぎみのデュッカにミナは言った。
「読んでなんていませんよ。ただ、ひとは与えられるだけでなく、頑張って生きているんだなあと思っているだけです」
サリはそんな考え方があるんだな、と思った。
結界修復は、一部の者たちが人々に与えたものだけれども、王を動かしたのは、その与えられた人々に違いない。
最初のコメントを投稿しよう!