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結界修復という大きな出来事が、人々に力を与え、立ち上がる勇気をも与えたのだろうな、とサリは思う。
それは確かに、自分が、自分たちが成したことで。
サリは頬を染めて空を見上げた。
自分たちは、すごく意味のあることをしたのだと思えた。
「嬉しそうだね、サリ」
「はい!」
サリはミナを見た。
そして自分たちを動かしたのは、支えてくれたのは、力をくれたのは。
数々の局面で、さしのべられた手。
それは温かな手だった。
「ミナは本当に、どこまで読んで動いているんですの?」
サリの問いに、ミナは困ったように笑った。
「本当に、たいしたことは考えちゃいないんだけど。そうだなあ、サリがカィンと何かあっただろうなってくらいは読めるよ」
思いがけない切り返しに、サリは頭の先まで真っ赤になった思いがした。
「そっ、そそそそれはなんというかそのうち話そうとあわわわわ…」
「あはは、かわいい。帰ったら真っ先にカリに報告しなくちゃだねえ」
「そっ、それはもちろん…ではなく、何かさっきまで話していたことと違うような…」
「気のせいっ」
傍らではデュッカが、どうしてこちらは進展しないのだろうなと言っている。
サリはからかわれながらも、幸せな気分を味わっていた。
翌日は、再びマルグリードに入り、一行はレムリス、スウェル、シャーリーナとの再会を喜んだ。
「怪我もなくて、よかった。旅の話を聞かせてくれ」
その夜、談話室で、サリたちは旅のいろんな話をした。
たくさんの城、森、湧き水のこと。
人々の様子、町の造り。
少し怖い思いはしたけれど、みんながいてくれたからやってこれた…。
サリは、話し終わると、本当にいろんなことがあったと、ほっと息をついた。
「君らになにか礼をしたいところだな」
レムリスの言葉に、サリは言った。
「とんでもありませんわ!わたくしたち…」
だが、ミナはちょっと笑って言った。
「それならお言葉に甘えてひとつ…」
ミナはレムリスをじっと見つめた。
「クオラさまの後ろ楯となっていただきたいのです」
レムリスは尋ねた。
「西セルズはいいのかね?」
ミナは頷いた。
「あの方の問題は、ほかにあるのです…それについては、政王陛下にご相談申し上げたので、そちらで対処してくださるはずです」
レムリスは合点がいったというように、頷いた。
「なるほど、それが今、噂されていることなのかね」
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