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ミナは意味が判らず首を傾げた。
するとレムリスは教えてくれた。
西セルズで人々が立ち上がり、王が中央政府に委任状を出したあとのこと。
委任状が届いた翌日、ヴェヅネッカから一団が王宮に入ったのだ。
この対応の早さに人々は驚いたが、もっと驚いたのは、王宮の食料庫を開いて民衆に無償で提供し始めたことだ。
これにはダヌカノイ・スリシュワゼが率先して、人々は飢えから逃れることができた。
また、中央政府受け入れにはホーベンデン・シャクセヌが動いて、正気を取り戻したらしき王との間を取り持っていると言う。
「よかったです」
ミナはにっこり笑った。
だがすぐに表情を改めて続けた。
「クオラさまには、実行力が必要です。あの方の手足となって役目を果たす…それを得るのに、お力添えいただければと思いますが…」
ミナは言葉を切って少し息を吐いた。
「私の考えでは及ばないので、レムリスさま自ら向き合ってくださればと思っています。もちろん、他国による介入は望ましくないだろうとも思うのですけれど、何かできるのであればと」
レムリスは頷いた。
「考えてみよう。しかし君ら自身は?」
ミナは手を合わせ、笑顔で言った。
「王宮を見てみたいです。案内してはもらえませんか」
シャーリーナが言った。
「わたくしがご案内しますわ!」
ミナは笑って頷き、それから続けた。
「あと、レア・シャスティマらしい土産を教えてください」
スウェルが頷いた。
「わたくしがご紹介できますわ」
「ありがとうございます」
レムリスは物足りないなあといったが、ミナは笑って、それだけあれば充分ですと言った。
翌日、早速、朝からサリとミナは王宮を回って、素晴らしい壁画や天井画のある図書館、博物館、奏楽館など見て回り、ふたつの鐘楼を振り仰いだりしては、王宮の広大さ、美しさ、荘厳さに感動したのだった。
昼からは、スウェルに情報をもらい、町に出て、土産を探し回った。
サリは美しい細工の服飾品に目がいき、ミナはここでも木工製品が気になった。
サリは、ひとつの髪飾りを、フィノとして姉の式に使ってもらいたいなと思い、対となる婿用のファノがないか探す。
「ん、どうかした?」
ミナが、ただ見るのではなく、何やら目的を持って探している様子のサリに目を留めて聞いた。
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