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報告
バルタ クィナールでサリたちは、ライネスに旅の話をし、安心したのか、サリは早くに眠くなり、皆に促されるまま展望喫茶室を出た。
サリが席を立つと、ライネスがミナに言った。
「あまりにも多くのことをやり過ぎたのではないかね?」
「そんなことはありませんよ」
ミナは困ったように笑う。
「本当に、色々してくれたのはみんなで、私は自分に出来ることをしただけです」
「そうかね?君が来なければ事態はこうも動かなかったのではないかと思えるよ。ティターヌの動きなどは目を見張るものがある」
ミナは微笑んだ。
「あれは民衆の動きです。私たちはきっかけにすぎない…ああいう大きな動きは、操作しようとしてできるものではないです…」
最後はすっと笑顔を消した。
「…何か反省しているのかい」
ミナはちょっと笑って、ライネスを見た。
「私の考えでは必要な処置でした。それは変わりません。ただ、それは自己満足でもあり、また、あまりにもやりかけのことが多くて…」
ライネスは言った。
「ひとりで全部抱え込まなくていい。皆で分担しなさい。君は働きすぎだ」
「そんなことは」
「働きすぎだ」
デュッカが口を挟んだ。
ミナは二の句が継げなくなり、黙り込む。
そんなふたりを見て、ライネスは笑みを深めた。
「ともかく、あとは帰るだけだ。ふたりともゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます」
こうして夜は更け、翌朝はもうアルシュファイド王国の領海。
一行が朝食を摂る頃には、バルタ クィナールは既にエラ島に接岸していた。
身支度を終え、彩石をすべて持つと、今度は入国管理の受け付けを済ませて、1時間ほど、船の審査が終わるまで待つ。
一行は、そのまま入国前広間に行き、サリたちは上階にある展望室へ上った。
2階なのでそれほど高くはないが、ほかの建物もそう高くはないし、エラ島は起伏の穏やかな島なので、アルシュファイド王国が見渡せる。
「帰ってきたんですのね」
サリの言葉に、ミナはうん、と頷く。
「お疲れさま。頑張ってくれてありがとう」
サリは赤くなって首を横に振った。
「こちらこそ、色々、配慮してくださり、手伝ってくださって感謝してますわ」
ミナはにっこり笑った。
展望室には喫茶区画もあるので、サリたちは飲み物を買って海側にある透明の硝子窓を向いて座り、談笑した。
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