ニーナ・Ｌ 武市三月事件の顛末

序章 大正7年3月7日午前4時

人、人、人でごった返しているのは市庁舎のなかも同じだった。さらにその中に分け入ろうと強引に人混みをかき分けていると、中から小銃を水平に構えたカザーク兵がどやどやと出てきて押し戻された。
「どけ、道を開けろ」
集まった人々は労働者や復員兵で武器は持っていない。暴徒のように銃口を向けられるなんて思ってもいなかったのだろう。どよめきはしたが言われるままに道をあけた。