序章 大正7年3月7日午前4時

4/7
前へ
/31ページ
次へ
そこに市庁舎の中から、一団の人々が押し出されてきた。カザークが周囲をがっちり固めているが、中に少し背の高い眼鏡の人物がいて、その顔は見間違えようがない。クラスノショーコフだ。だとしたら、近くにニーナの目当ての人もいるはずだ。 やはりクラスノショーコフの姿に気づいた人たちは、カザークが手にしている武器のことなど忘れて殺到する。カザークたちも道をあけようと押し返す。 カザーク兵に追い縋り、くってかかっている人たちもいた。その大半が明らかに日本人とわかる服装・顔つきの男たちだったのを見て、ニーナの心臓は激しく鼓動を打った。 (あいつら……) 無意識のうちにプラトークを引っ張って顔を覆い、怒号が飛び交う中を泳ぐようにして突き進む。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加