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開放されるのはお前。
そして俺の心。
でもそれは
「やめてやるよ」
そう、俺が告げれば…だ。
お前を繋ぎ止めれば止めるほど、俺の心は悲鳴を上げて。
お前の体も悲鳴を上げる。
無残な傷跡は、治癒が追いつかず体のいたるところに俺の爪痕を残していた。
哀れな俺の心。
それ以上に…精神も体も限界域までとっくに達しているのは…。
「お前だよな…」
傷つけることでしか、お前を愛せない。
愛しているのに、引き裂くことしかできない。
声にならない叫びを幾度となく耳にしても、いやそんな声が届くほど俺の精神は歓喜に打ち震え、さらに堕ちていく。
「あ…あな、た…」
美しかった妻の、見る影もない現在の顔。
掠れた呟きに俺は反応して、お前の頬を柔らかく両手で包み込んだ。
「もう…終わりにしてやるよ」
瞳をそらさず、そう告げた瞬間にこぼれ落ちた涙にはいったいどんな意味が込められていたんだろうな。
fin
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