蹴ろ!

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 公園のベンチに腰を下ろし、缶コーヒーを飲みながら休憩する私と岩城課長。  かつてはスポーツマンだったと、確証も無い武勇伝をひたすら聞かされた。  休憩なのに疲れが溜まり、私は俯いてしまう。  すると、足元にサッカーボールが転がってきた。  顔を上げると、小学生が手を振りながらアピールしている姿が視界に入る。  私は立ち上がり、ボールを投げ返してやろうとした。  しかし、同じく立ち上がった課長に止められる。  課長は私に背を向けたまま少しだけ振り返り、親指を立ててウィンクした。  異常なまでに気持ち悪い。  岩城課長は気合を入れ、小学生に向かってボールを蹴ろうとした。  ……力が入り過ぎたのだろう。  ボールを蹴るはずの足は空を切り、履いていた靴だけがすっぽ抜けて飛んでいった。  そしてバランスを崩し、後頭部をベンチに強打する。 「課長―――!!!」  そしてボールの代わりに飛んで行った靴は、ゴミ箱にホールインワンした。 「課長―――!!!」  後頭部を強打した為、岩城課長は検査入院を含めて5日間の有休を使用した。
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