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「お…おう。びっくりした。これ、もらってもいい?」
「ああ、持ってけ。はっはっは。こんな上手い絵を描くからといって、あたしに惚れるなよ!」
あたしは腰に手を当てた。
金子くんは、さらっと言った。
「ああ、それはねえよ。俺、他校に彼女いるから」
「冗談に決まってんでしょ」
…心の中に、寂しい風が吹いたのは、あたしの気のせいだったのだろうか。
…虚しいです、正直。
そして、ちょっとチクチクしてます、心が。
「悪かったな、スローロリスなんて言って」
絵をもらった途端、しおらしくなるなんて。
案外、単純だ。
「別にいいよ。あのサル、可愛いし」
「…可愛いサルだよな。たとえ変えるわ、次から」
「どういう意味!」
いつになったら、あたしは恋ができるのだろう。
そして今日も妄想が頭の中を支配して、漫画が描けない…。
〈終わり〉
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