イケメンがあたしに恋した日(仮)〈松木加奈創作ノート〉

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「おめえ、そこ、どけろよ、邪魔くせえ」  ああ、野球部の金子重幸(かねこしげゆき)くん。ほんと、この人はあたしを邪魔にするわ。  2年のときに田宮くんと同じクラスだったし、結構つるんでいたみたいだから、取材を申し込んだりしたんだけど。  金子くんって、ほんと、非協力的で。 「人の恋路を追っかけてる暇があったら、自分のこと心配したらどうなんだ? マジ、おまえ、そのうちカビ生えるぞ」  実際に話してみたり、周囲にいろいろと取材していくうちに、田宮くんのスマートさは目減りし、実はお茶目で案外口も悪いということがわかったのだけれど。  それにも輪をかけて金子くんの口の悪さと来たら群を抜いている。 「なあ、どうせ書くなら野球漫画描けよ、野球漫画。そしたら俺、読んでやらなくもないぞ」 「描きません」 「あ、そ。恋愛漫画なんか、くっだらねえ」  そりゃあ、くっだらねえでしょうよ。スポ根漫画しか読んだことない人には。 「まあ、せいぜい頑張れよ、スローロリス」 「痛っ」  野球部のバッグがあたしの肩に当たった。絶対、わざとでしょ。 「あ、ごめん。道具がデカくて」  すずリンじゃないけど、こめかみから角が生えそう。
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