イケメンがあたしに恋した日(仮)〈松木加奈創作ノート〉

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 金子くんがいないと思ったら、あ、そう、キャッチャーだったの。はじめて知ったわ。  …おかしいな。地区予選の応援とか球場に行ってた気がするんだけど、全然知らなかったなんて。補欠だったのかな、ずっと。  キャッチャーって、ずっとあの姿勢で、足しびれそう。  エースがパンパン投げていく硬球を、スパスパ捕ってる。  へえ~。野球部の練習風景なんてはじめて見たけど、なんかみんな、青春って感じだな。  創作意欲が急に湧いて、あたしはいつも持ち歩いているスケッチブックを取り出した。  気がつくと、金子くんを描いていた。  そしていつしかあたしは夢中で描いていた。  ギャラリーの数も減って、辺りに夕陽が立ち込めた頃。 「なーんだよ、せっせと何描いてんの?」  …金子くん。  あたしは、ページを破き、金子くんに渡した。 「え? これ、俺?」 「まあね。野球漫画は描けないけど、イラストなら描ける」 「何で? どうして?」 「あんまりさあ、スローロリスとか言うから。スローロリスだって、絵は描けるんだよ。バカにしないでよね」
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