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ハッピーバースデー
「「ふ‥双子!?」」
シエルと佳苗は、産科看護師からエコー画像をにこやかに手渡された。
「差し上げますよ、記念にどうぞ(笑)」
白髭を蓄えた瓶底メガネの老医師が、カルテに目を通すと茶を啜り、クルリとふたりに向きを変えて言った。
「出生前診断の結果に問題ありません。
二卵性双生児の大変珍しいケースですな。
其々別の父親の遺伝子を継承しているようです。
あぁ(笑)…事情は伺ってますのでご安心なさい。
…理論的に可能とはいえ‥‥しかし‥、
まさかこのような事例を望ましい形で実際目の当たりにできるとは‥‥ハッハッハ☆
長生きはしてみるものですなァ!
これは、千載一遇の慶事‥奇跡ですよ。
おめでとう☆
いや、実に良く出来た!素晴らしい!!」
「母体も双子ちゃんも共に良好順調です‥‥お大事になさって下さい♪」
やがて佳苗は臨月を迎え、シエルは宿屋を休業…出産・育児に備え、アレやコレやと手を尽くし準備を整えた。
フランスからシエルの一家も祝福にやってきた。
勿論、姉夫婦‥シモンとエマも…。
「旦那様より孫と先に会うことになるなんて…なんて子なの!?
シエルにはいつも驚かされるわ☆」
「フォン君とのリモートではデレデレだったじゃないか?『シエルの今度の彼は若くてハンサムでステキだわぁ~♪』って…」
「アラやだ…あなた、ヤキモチ妬いてらっしゃるの?ホホホ‥やぁねェ~♪
若い頃のあなたには敵わないわよぅ♪」
「‥オ‥オホン‥あ~‥‥なンだナ‥‥
色々不幸も重なり、こちらも事情が解らずヘソを曲げたりで‥シエルだってなかなか私たちを日本に招き辛かったのだろう…」
「まったく身勝手な弟だわっ!
私の子どもたちには一度も会いにも来ないで‥‥癪に障るから来てやったわヨッ」
「アハハ‥
でも、お誕生日とクリスマスにはシエルの叔父ちゃまから必ず素敵なプレゼントが届くよねぇ‥ルイ、クロエ」
「ソーだね、いつもママンよりは全然センスいいよね」「イイよね♪」
おしるしがあったとの知らせにシエルは岡の自宅へ急いだ。
岡の運転で病院へと向かう中、顔面蒼白で慌てふためくシエルを落ち着かせるのは、出産が迫る佳苗の方だった。
我々が到着した時には既に岡とシエルは妊婦に付き添い分娩室の中だった。
8人の子どもたちも集まり、総勢16名が待合室で母子の無事を祈っていた。
病室から分娩室に運ばれ2時間、
元気な産声が上がり、続いて二人目の声が聞こえた。
2200g×2
産まれたての赤ん坊は、キリリと精悍な眉に黒髪、
そしてもう一人は色白のプラチナブロンド‥
ミニサイズのフォンとシエル。
愛らしい二人の男児であった。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!
私ってぇぇ‥
最期の最後で詰めが甘いのよねェ~…
どーして女の子が作れないのかしらっ!?
どちらか一方でも女の子なら完ッ璧だったのにィィィ!残念っ!!
悔しいぃぃぃ!!!」
「オイオイ‥佳苗‥‥息んでる時より声がデカいって…ハハハ‥静かに‥」
「大仕事をやり遂げといて“残念”とは…
逞しい奥様で見上げたモノですな!
わっはっはっは☆」
「宮本さん‥シエルさん、大丈夫ですか?
しっかりして下さい(笑)
あなたのお子さんですよ、抱いてあげてください」
シエルの顔は青ざめ、涙でぐしょ濡れ…今にも気を失わんばかりだったそうである。
「‥‥bebe‥僕と‥フォンの‥bebeだ‥
こんにちわ‥‥ようこそ‥僕の子どもたち…
ありが‥とう‥‥佳苗さん…エッ‥エッ…本当に
あり‥が…ぁ‥あり‥‥あり‥がとう‥‥
‥ェグ‥ヒック‥‥お疲れ‥様‥でし…た‥」
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