その9

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その9

翌朝の寝覚めは最悪だった。 朝食の声が掛かって漸くノソノソと這い出し、パジャマのまんま、だらしなく席に着く。 「おはよう、出海さん! 昨日は1日ボクに時間をくれてありがとう。 ワガママ云ってごめんね…本当ならのんびりと大好きな釣りだってできたのに…」 「・・・・・」 「出海さんが付き添って見守ってくれたおかげ…ボクは最後まで耐えることができた‥。 ほんとにありがとう!」 「・・・・・」 「今まであんな辛かったのに、体調も問題ないなんて驚くよ…どうしちゃったンだろね…」 「・・・・・」 「今日は出海さんが注文してた足りなかった絵の具が届くって。受け取りはボクのサインでもいいのかな?」 無意識にシエルの口元に視線が向かう。 気にしないよう意識すればするほどドツボにはまっていく‥。 「・・・・・」 「出海さん?い・ず・み‥さ‥」 「…ごちそうさま‥」 私は朝食に殆ど手をつけず部屋へ戻り、またベッドに横になり、果てしなくゴロゴロし続ける。 挨拶?習慣?好意?友愛?親愛?人間愛?人類愛?慈愛?敬愛?愛・恋‥恋愛!? 中二病か!?俺はっ!! 人はナゼ接吻をする? 生命に関わる良質な食物(しょくもつ)を体内に取り込む為の第一の関所【唇】 その為神は、人体に悪影響を及ぼす危険物を察知する神経を集中させ、与えたもうた、大切な大切な【唇】 次世代へ生命を継承すべく、その神経を生殖器官と連動させ“触れなば落つる”快楽をももたらす生と性への入り口【唇】 それは人類にとって神聖なるもの… 神よりもたらされた快楽の奇跡! 【接吻】!!!!! シエルは何故アイツにキスをした‥‥ 私の心に気づき私を弄んでいるのか? それとも弄んでいるのは竜生の気持ち? まさかまさかまさかまさか‥加藤竜生が‥ 好きなのかあああああああああああああ!! あり得る‥あり得る… シエルは実はすンげーマゾヒストで、昨日の無茶な施術で開眼とか‥ ‥‥それにそれに‥仕事中のアノ野郎‥チョッとカッコ良かったもんナ‥‥ ダメだぁぁぁ… チューなんかしちゃ‥‥ダメじゃん‥‥‥ シエルのばか‥‥ 終わった‥‥‥完全に‥おわり‥だ‥‥‥」
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