その11

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「六道君からのSOS 見たときは、何事が起こったかと超びびったワ~… 連載原稿もまんまと落としやがって…。 酒浸り?恋煩いのあげく・・・ お前は昔っからそうなんだよ! 本人に直接訊ねてみりゃ済むことをグズグズ ‥グズグズ…。 言わなきゃ伝わらん!思いってもんはっ。 どーでもいいオバチャン・子どもには愛想いいクセに肝心なとき間が抜けてンのナッ! で、お互い一目惚れの相思相愛ってかァ? ‥‥おめでたいこってよーござんした! …ったく‥‥結局デキてやんの… あ~あ!焦ってソンしたあー!!」 テラスの藤製ベンチに長い脚を投げ出して、竹脇はアイスコーヒーのマドラーを振り回しぼやいた。 シエルは山岸経由で荒む私への助けを編集部に求め、知らせを受けた竹脇が自ら時間を作って駆けつけてくれたのだ。 「…悪いと思ってるよ‥迷惑かけて‥‥。 だって‥慎重にもなるって… そんな‥‥ハッテン場みたいにチャッチャといくわけないじゃないか、マジの恋愛なのに…」 「マジだからタチが悪い! …六道君にはパトロンが付いてるんだってな‥ ‥観光船のパーサーからチラッときいた‥‥ 南部会系暴力団‥遠山‥」 「遠山五十一だろ?」 「!!知ってて‥なぜ!?」 「シエルの背中には遠山が入れさせた刺青がある…。 遠山一家は南部会系の中でも人道派といわれる南条組傘下‥旧くから地元に慕われる用心棒的存在らしい…。 もうかなりの高齢で、シエルにとっての遠山は肉親にも勝る信頼できる人物だと。 彼の話では島の譲渡にあたって、背中を買って貰ったってことなンだが…」 「背中を買う!? ‥‥何にせよ、あまり深く首を突っ込まんほうがいい。 ‥‥つっても、‥‥既に無理なんだろうがな‥お前には…」 「大丈夫、以前みたいな素性の知れないチンピラの火遊びに巻き込まれたわけじゃないんだから(笑)」 「まともな恋愛はできないのかねェ…。 シエル君にフラれたらいつでも俺ンとこ来ていいゾ♪」 「よく言う…変態ショタ専のクセに。 年下小柄のベビーフェイスしか相手にしないンじゃん。 ‥シエルが小柄でなくて助かったよ」 「お前は‥‥ とにかく、ナニかヤバイと思ったら直ぐに相談しろ。シエルにばっか甘えてねぇでサ…」 「ああ、頼りにしてる‥サンキュ」 台風一過の修繕工事を依頼した業者が港へ戻り、打ち合わせを終えたシエルは神妙に竹脇のもとに近づき畏まった。 「竹脇さん‥お忙しいのにお越しいただいたいて本当にすみません! ‥ボク‥パニクって竹脇さんにまでご迷惑かけてしまって…」 「イヤイヤ…連絡くれてよかったよ。 たまに見てやんないと、コイツすぐ迷子になっちまう(笑) ま、結果‥痴話喧嘩っつーことで済んでホッとしたわ」 「ち‥‥ちわ・・・‥ヤ‥ソノ…」(//////) 「これからもこのイロボケ野郎のことを宜しく頼む。 ちゃんとしてそうに見えて、誰かに手綱とられてないと収拾つかなくなる奴だから」 「‥‥‥はぃ…」 「ほんじゃ、俺はこれで。 あとの約束あるし、俺が居たら折角のハネムーンも台無しだ‥他人のいちゃつくとこなんて見てらんないもんね(笑) あ、送んなくていいよ、迎えのボート頼んどいたから。 ‥‥お、来た来た! 六道君、プリン旨かった☆ 佐々木に飽きたらいつでもメールして♪」 そうして竹脇は送迎ボートに乗り込んだ 。 「おふたりさん、色々(エロエロ)ごちそうさま(笑)」 ・・・・・・・po~‥ 「あンのヤロ~‥」 「エヘヘ、帰っちゃったね♪ ナンか竹脇さんってイイ人‥出海さんといいカンジ…」 「(‥コンドー〇置いてきやがった…)」 「夕飯何にする?なに食べたい?」 「‥おまえ‥」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え‥‥‥(///―///)」 「六道神龍、フルコース!」 「…オプション別料金だよ…イイの? ・・・・・上手だったらタダでいいケド‥」 「ムッ?!・・・・・どうかな‥‥ ワンディッシュにしとくか‥?」 「それはナイッ! そーじゃなきゃボクはアナタを姦淫(おか)すっ」 「フフン♪姦淫()れるもんなら()ってみ?」 幼鴨と茄子のグリエ・薫香ソース アーティチョークとほうれん草のグラタン ドルチェット・ダルバ 食事が済み、其々入浴も終え、明日の準備も整った。 シエルの部屋の扉は開いている。 シエルの部屋は極めてシンプルだった。 クローゼットと本棚‥机にはパソコンと数冊の使い込まれたレシピ本‥ キングサイズのベッドに横たわり、シャオとじゃれあうシエルの腕が私へと延びた。 私はシエルの手の甲にくちづけ、腕・二の腕・肩からデコルテと啄んだ。 うっとりと目を閉じ息を殺すシエルの顎を上向かせ、 半開きの柔らかな唇に触れ…重ねた‥。 ゾクゾクと痺れるような快感がわたしの全身を駆け巡る。 ふと、いつかの加藤への場面が脳裏をかすめ、自分の雄が一層猛りを増すのを感じた。 私たちにはテクニックも挿入も必要なかった。 ただ‥ただ、肌と肌を合わせているだけで、私たちは十分興奮したし、 シエルの身体はどこまでも敏感だった。 お互いのあらゆる場所を愛でて、触って、撫でて、嘗め‥甘噛みし、味わい、握り合ったり‥そんなことでも何度もイかし合えた。 「困ったな…いくら払えばいい‥‥シエル…きみが‥‥可愛過ぎて‥困る‥」 「この‥身体で払ってくれれ‥ば‥十分です ‥…ぁ」 「私に‥君を満足させられてるか…心配…」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥シャオが‥見てる‥」 「‥‥そぅ‥‥‥フフ…」 「‥ぅ‥ン‥‥も…もっと‥‥もっとだよ…出海さ‥ん… …ボクは、欲が深いね‥あなたが‥全部欲しい‥あなたで僕を…いっぱいに‥‥満たし‥てくだ‥さ‥ ‥‥ぃ‥‥‥‥」 島民は宿の主と猫が一匹。 酒と料理が自慢の宿。 船着場に面した風通しの好い洒落たオープンカフェ。 趣味のいい調度品。 「此処はイイね♪秘密基地みたいで、ワクワクする☆」 「良かった‥気に入ってもらえて…」 用があったらいつでも大声で呼んで。 どこにいてもあなたのことは判るから。 都会の喧騒を逃れ、 癒やしを乞う者が訪れる場所。 アイツは今日も、私を待ち続ける…。
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