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∞∞∞厳寒の海 打ちつけられた冷水を、びくともせず跳ね返す肉体と不動の表情∞∞∞ 四名の若者は行修者と呼ばれ、禊までの3日間神社に籠り、昼夜を問わず水垢離に専念し穢れを払う。 厳格神聖な神事において如何なる過酷な状況下であろうと、震えることは許されぬ。 背中から浴びる真水の冷たさは身を刺すような痛みで襲い掛かる。 初参加の若者はガクガクと体を震わせ、身構えを保つことすら儘ならず、気を失うことも少なくない。 若者たちは4年間の様々な酷しい掟を守り、この役目を全うする。 それは彼等自身と地元の人々のかけがえのない誇りとなり、逞しい漢へと成長を遂げるのだ。 かつては行修者を経験した親爺さんが、近年の記録を残しているというので、是非にと見せて貰った。 「ワシ等の頃は戦争の傷跡もまだまだ生々しくてな、しえちゃんの島はまだ誰も立ち入れなかった…」 精悍な若衆に混じり一目で彼とわかる艶やかなオーラの行修者‥‥ 神事初年‥十代最後の初々しいシエルの姿がそこにあった。 幼気(いたいけ)な面差しを残し、少女のようにどこか儚げで庇護欲を掻き立てられる印象の彼のあられもない下帯姿は、なんとなく観ているこちらの方が気恥ずかしくてならない。 褌一丁の若衆は立ち膝で腕組みをし、背中に打ちつけられる冷水を夜通し耐え忍ぶ。 画面の中の少年は血の気を失いフラフラになりながら、何度も何度も行修者OBに支えられ過酷な試練を乗り越えた。 そうして三日目の朝 勇壮なみそぎ太鼓に送られ、肌を突き刺す寒風の中、白装束に身を包み、厳かにみそぎ斎場へ向かう。 口には、ご神体に直接息を当てぬよう、また、必死で歯を食いしばって耐え抜くため、吐錠(とじょう)と呼ばれる白い晒布をくわえている。 褌姿になった凛々しい四名の行修者たちが、 各々御神体を抱いて極寒の海に入水し、四柱の御神体を洗い清め、 海の安全と豊漁・五穀豊穣を祈願した。 神々へ純潔と祈りを捧げる白金の髪の少年の勇姿に、私の胸は狂おしいほど熱く高鳴った。 最後には観客に向かって真水が投げかけらる。行修者のかける水を浴びると、家内安全、無病息災などにご利益があるという。 「‥‥‥‥ありがとうございました。 ‥‥‥素晴らしい…」 感無量の私をよそに、 親爺さんは小学生のお孫さんからプレイヤーのリモコン操作を厳しくレクチャーされていた。 「あの‥シエルは次が最後だって言ってましたが、彼の‥彫物は問題ないんですか? 穢れ行為‥つまり神事のタブーに触れるのでは‥‥」 「はっはっは☆ ありゃ、五十一(いそいち)の旦那がその為に入れさせたんだ。 五十一っつぁんは此処等じゃ町長・議員先生より頼りにされてらァ。 神社仏閣縁日を仕切る【漢・遠山】がヨシといえば、黒いモンは白に…白いモンは桃色になるってモンよ! しえちゃんのハレの門出だ‥ 晴れ着よ、ハレ着♪」 「ハレ…って‥‥、それにしてもあんまりだ…借金の(かた)なんじゃないですか‥‥一生残ってしまう…」 「‥‥‥出海先生には話してなかったのか‥。 ぁ‥イヤ、 センセーがどこの誰から聞かされたかは知らねぇが、そいつァ全くの見当違いだな。 あんなンだろ?しえは… ガキの頃から妙な輩に直ぐに目ェつけられンだ。 中学に上がったくらいか… しえるを女と勘違いして入れ込んじまった北島組の犬畜生が‥アイツを待ち伏せ‥‥‥。 鬼畜が起こした騒ぎで組同士ひと悶着あったンだが、警察の監視と南条組が仲裁に入って抗争までには至らなかった‥‥‥‥ けどよ‥‥‥ ‥‥‥‥あン時の‥アイツの‥‥有り様といったら‥‥‥‥ ‥‥クソッ! 北島と口にするだけで反吐が出る!! その後は一家で母親の国に移り住んで、イイ医者にも診てもらって暮らしてたんだが、 ‥‥それでも‥アイツめ‥ 母親の話だと、アッチに居てもこの街を‥‥ 皆のことを‥ いつも‥いつも…恋しがってくれてたらしくてなぁ‥‥グスッ‥」
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