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その4
洒落ているのに気取らない、地産の旬を盛り込んだ絶品料理…どれも文句のつけようがない。
「スゴい!いちいち旨いな☆」
「フフ♪ありがとう、喜んで貰えると嬉しい」
私は特にグルメというわけではないが、
食材を生かした味、私の健康に配慮した上の工夫、普段のヌーベル・キュイジーヌらしい軽く繊細で印象的な盛りつけ方といい、
総てが私の好みに叶っていた。
料理を中心に会話は弾み、
この島がかつて旧日本軍の要塞であったこと、
どうして私有地となり現在に至ったか‥などにまで話は及んだ。
程好く酔いも回り汗を流して床につくことに…。
「ひとりで平気?湯中りしないようにね」
ミネラルウオーターを持たされ、私はバスルームへと向かった。
・・・小憎らしいことをシラッと言う…裸の付き合いなら望むところだ!
…が、淫らな我欲は押さえてこそ築ける信頼関係である。
独りには些か広過ぎる湯船に浸かり、シエルと出会った激動の一日を振り返った。
目を閉じれば浮かんでくる、tattooに隠された愛の言葉たち‥,
彼の素肌に触れる彫師とはどんな人物なのか‥
シエルをめぐる第2第3の人物は彼にとって如何なる存在か…。
そして、あのtattooは誰のもので、
どのような経緯で‥‥
施術の様子を一目でいい、見てみたい!
私自身の傷心と同様に、彼が激痛を堪え忍ぶ姿を想うと胸が抉られる思いだ。
しかしその一方で、彼の痛々しくも狂おしい苦悶の様を期待し求めずにはいられなかった。
彼のぬけるような白い肌に鮮血が滲み、次第に艶やかな色彩で彩られゆくのだろう。
苦痛の果て‥やがて恍惚に呑み込まれ、しどけなく横たわる彼の姿を想い描く‥‥。
どれほど艶かしく官能的であろうか‥。
それほどシエルの魅力は破滅的なのだ。
やはり、この島は離れ難い‥留まるべきだ!
数年前の騒動を最後に、最早あるまいと思われた己の男根の屹立に感心しつつも呆れ、
宛のない欲情の火照りは冷水を以て虚しく冷ますしかなかった…。
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