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後日談
「師匠。これ、戻るのですか…」
ハットはローゼンに向かって心配そうに聞く。
「ツバ付けときゃ治るわよ!」
ローゼンの代わりにミルキーが答える。
「アンナのところに連れて行ってニャ。アンナなら、治せるニャ…」
戦いの最終日、ローゼンが囮となり、その代償でグランドドラゴンに左足を切り落とされた。グランドドラゴンは人のように知能が高い。ドラゴンは自分自身の成果に満足し、隙を見せた。それをハットとミルキーは見誤らなかった。
そこからふたりで一気に切り込み続け、1時間ほどでグランドドラゴンをミンチにしたのだ。
ハットのたちの戦いは終わった。世界は救われたのだ。だが…
「ハットって戦闘中、ずっと干し肉を食べていたわよね。それって…」
ミルキーがハットに聞いた。
「魔法屋で仕入れたんですよ。寝不足や肉体疲労、当然食糧にもなるって。ほんのひと切れで3日ほどは元気なままなんだって言ってました」
ミルキーはその干し肉をハットに見せられ、マジマジと観察している。
「これ、能力が付いているわよ…いえ違うわ…私これ、知ってるわ…」
ハットとミルキーは魔法屋に行った。魔法屋の店主はふたりを、いや、ミルキーを見た途端、逃げ出そうとしたのだ。
「パパ! 何十年もどこに行っているのかと思ったら、こんなところにいたのっ!!」
なんと魔法屋の店主は、ミルキーの父親で地上の神、アゼナズスだったのだ。
「いや、その…帰りたくても、帰れなかったのだ。まあ、言い訳になるのだがな…」
地上の神はいい訳をした。ハットにマジックキャンセルを掛けたのと同時に神の力を全て吸い取られたそうだ。どうやら、アンナのかけていた治癒の呪いのカウンターを受けた様である。
アゼナズスは天界に帰ることができなくなっていたのだ。
「ウソおっしゃい! 今は回復してるじゃない!! この程度だったら私にでもわかるのよ! パパ、帰りたくない理由でもあるの?!」
―女神ミルキーは恐妻になるんだろうなぁー。ご主人、かわいそうだなぁー…― と、まるで他人事のようにハットは思った。
ハットにも神の権利が与えられていることに、ハット自身もまだ気付いていない様である。
― おわり ―
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