冒険者の旅立ち

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「おい! ハット! 猫師匠からの呼び出しだ! このギルド、抜けろってよ…」  グラウネルギルドのマスター、ヘムズ・サークレンは、苦虫を潰したような顔でハットに向かって叫んだ。 「ローゼン師匠が…どうして…」  ハットはまだ15才。しかし剣士としての腕前は彼の右に出るものはいない。世界ランキングでも常に不動の2位という高成績だ。  ローゼンミラー・クロイツは冒険者としてハット以上の実力を持つ。ハットなど、足元にも及ばないほどの実力者。そしてハットの師匠でもある。  人々はローゼンミラー・クロイツの名を出すことを控える。彼は何かと、厄介者扱いされているようだ。  ハットがローゼンの弟子になったのは2年前。1年間の修行を経て、暫くは違う釜の飯を食うようにと師匠から言われたために、このギルドで手腕を発揮することになった。  普通ギルドを抜ける場合、とんでもない制裁を受けるものであるが、ローゼンの推薦ということで、ハットの脱会のペナルティーは不問に付された。 「ハット、ギルドを抜けたからといって、ここがお前の居所でなくなったわけじゃあない。いつでも帰って来いよ」    ヘムズは寂しそうにしてハットを見送った。「ハット、ギルドを抜けたからといって、ここがお前の居所でなくなったわけじゃあない。いつでも帰って来いよ」    ヘムズは寂しそうにしてハットを見送った。  ギルドメンバーもほぼ全員がハットを見送る。そのハットも目に涙を浮かべ、何も語らずギルドに背を向けた。
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