第1章 兄弟

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風が吹いていた。 そう。 あの日は絶え間なく風が吹いていた。 そういえば、始まりの日も風が強かった。 「一緒に来るか?」 僕たちがはじめて覚えた人の手のあたたかさ。 風が吹いていた。 「絶対に許さない。」 風は泣き声を打ち消し、憎悪を運んできた。 時が過ぎたあの日も風がごうごうと吹いていた気がする。 あの人は知っていたのだろうか。 ぼく達はまだ8歳だった。 風が、吹いていた。
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