第1章

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「いいえ。その子は猫カフェの店員です」アヤメさまが大真面目に返しました ので、サクラ姉さまはしばし沈黙され、 「おや、ねこかへの……」と小首をかしげます。その仕草、目下のアヤメさま から見ても可愛いことこの上ありません。心の中で『きゃあっ』と嬌声をあげ つつも、姉君には申し訳ないことをしたと反省しました。お若く見えても、姉 さまは江戸時代のお生まれ。まもなく四百歳になられるのです。うつろいやす い浮世の流行など、いちいち追いかけておいでのはずがございません。 「あの、猫カフェと申しますのは……」遠慮がちに説明しかけますと、 「存じておりますよ、ねこかへ」サクラ姉さまはちょっと自慢げに仰いました。 「このまえ書斎にインターネッツを入れましてね。アップロードがクリック・ クリックです。もちろん、ねこかへも……」  アヤメさまはつい、ぽかんと口を開けてしまいました。  でも、これは知ったかぶりをなさっているのだと納得し、くすりと笑います。 するとサクラ姉さまも優しく微笑まれたのです。心と心が繋がったように思え るこんな瞬間が、アヤメさまには、とても心地よいのでした。
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