act.1

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『人が本当に恐れているものは何だと、どんな事だと、君は思う? 傷つけられる事が怖い? 否定される事が怖い? 人それぞれあると思うが本質的に人が怖れを抱くもの… 私はそれを知っているー』 夢を見た、厳密に言うと見ていた。 今の今まで耳を劈く目覚まし時計の音を聞くまでは。 『さて、学校に行かなくちゃ』 気分が良い。 何故だか分からないけど晴れやかな気分だ。 今日が月曜日である事を除けば、概ね良好。 朝の陽射しを浴びて生きている事を実感してから、人並みの生活に勤しむ。 こう見えて彼女は現最強のソレノイドアクターであり、またの名をー 《戦慄猟姫》そのまたの名をー 一纏一縷と呼ぶ。 しかしながら、ここで一つの疑問。 そう、ソレノイドアクターとは一体なんだ? 今から約一週間前、少女は人間ではなくソレノイドアクターとして生まれ変わった。 つまりソレノイドアクターは人間では無い。 肝心なのはここからだ。 ただ単に人間では無いと言われてもどこがどう違うのか姿を見ただけでは分からない。 違うのは姿では無くて内なるもの。 ー精神だ。 ソレノイドアクターは脳内にある松果体という部分を改造された非人間の事。 彼らは、自身の精神を。 自身の意識を武器のように或いは手足のように扱う事ができるのだ。 それがどういう事か理解しづらいかも知れない。 そこで、一人の少女。 先ほど紹介したソレノイドアクターの中でも現最強と名指される少女。 一纏一縷を例にしてその実態と習性及び、その想像を絶するソレノイドアクターの実験報告をここに記す。 ー2015年6月20日 pm12:32 一纏一縷の実験報告 by Mr.フレキシブル その1 一纏一縷と戦慄猟姫 彼女の一日は決まっているかのように代わり映えのない、変哲もない。ごくありきたりな二十四時間であるが。 それゆえ、いつ何をしたかすら忘れてしまう。 特に、彼女の記憶の中で行われるどうでもいい事と、無くてはならない事を反芻し選び取る剪定が、限られた脳内の記憶貯蔵庫に保管するに、覚えておくに、相応しくない。 そう、判断するものから容赦なく記憶の断片さえも残さず消し去ってしまうからだ。 昨日の夜、三人のソレノイドアクターに襲われた事も、彼女にとってみれば相応しくないものだった。
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