第3章 夏合宿1日目

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「子供じゃないんだから、早く泣き止みなさい!強くなりたいんでしょ!」 「は、はい・・・」 「返事は1回!何度言わせればわかるの!?」 「はい」 「ところで、加奈の防具や道着、全然汗臭くないよね。一生懸命練習すれば、すぐに汗臭くなるはずだけど、手を抜いてるって事よね」 私はわざと意地悪く聞いた。 「そんな事ないです。一生懸命練習してます」 「本気で稽古しているなら、防具や道着がそんなに綺麗な訳ないでしょ! みんな汗まみれになって、必死で稽古しているの!初心者だからって甘えるんじゃない!」 また大粒の涙を流す加奈。 「もしかして、加奈は汗臭いのが嫌なの?恥ずかしいの?」 「そんな事ないです。臭くても恥ずかしくないです」 「本当に心からそう思っている?  毎日毎日汗まみれになって、面も小手も道着も、自分自身も汗臭くなるんだよ。 同級生たちが遊んだり、恋愛を楽しんでいる時に、臭くてキツくて厳しい剣道を必死にやる覚悟はあるの!?」 「あります!必死に剣道をやりたいです」 「分かった・・・。みんなも聞いたよね、加奈の覚悟。 今年の夏は‘日本一汗臭い女子剣道部’を目標にする。 そして、‘私は日本一汗臭い女子剣道部顧問’を目指すし、 みんなはそれぞれが‘日本一汗臭い女子剣道部員’を目指す事。 防具も道着も部員も私も、みんなで日本一汗臭くなって、体から湯気を出そう。 分かった!?」 「はい!」 部員全員の声が揃った。 この30分で見せた私の本気に、生徒たちは覚悟を決めたようだ。 これで、この10日間は思う存分、生徒たちを汗まみれに出来る。 私は心の中でガッツポーズした。
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