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第3章 夏合宿1日目
夏合宿当日
朝6時に高校最寄りの某駅に集合、電車とバスを使い3時間ほどで民宿に着いた。
電車やバスに乗っている最中、生徒たちはお喋りしたりウトウトしたり思い思いの3時間を過ごした。
バスが朝と午後の1日2往復しかないという時刻表を見て、生徒たちは驚いていた。
そう、ここからはもう逃げられない・・・汗まみれの10日間が始まるのだ。
民宿に着き、キャプテンが玄関口で民宿の経営者である老夫婦に挨拶をした。
キャプテンは詩織という高校2年生で、小学1年生から剣道を続けている。
剣道に対して妥協をせず、自分自身に対しても同級生や後輩に対しても常に厳しい態度で臨む詩織に、私の中学時代の憧れの先輩に似た気持ちを抱いていたのも事実なのだ。
剣道歴10年の詩織だけあって、背筋が伸びた挨拶は立派なものだった。
ただ、他の一部の生徒が挨拶の時にお辞儀をしない、口が動いていない、キャプテンを含めた全員が脱いだ靴を玄関に放置し靴箱に入れなかったのを私は見逃さなかった。
私は生徒たちの礼儀の欠けた態度に情けなさを感じると同時に、雷を落とすキッカケが出来たと内心ほくそ笑んだ。
「部屋に荷物を置いて、剣道着に着替えて10時に剣道場集合。それからいったん練習に入ったら夜まで部屋には戻らないよ」と私は指示した。
この合宿では私も生徒も寝食を共にしたいと考え、私を含めた8人全員が大部屋に泊まる事にした。
その方が余分な部屋代が掛からず合宿費が浮くし、生徒たちに常に緊張感を与えることが出来る。
顧問と同じ部屋に泊まるという事を初めて知った生徒は明らかに不満顔だったが、私は全く意に介さなかった。何しろこの合宿では生徒も私も妥協を捨てて日本で一番汗臭い女子剣道部を目指すのだ。
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