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「夏合宿を始める前にみんなに言いたいことがあります。
電車やバスの中の態度、合宿に行く態度だったと思う?
みんなメールやお喋りに夢中で剣道の事なんか何にも考えていなかったんじゃないの?
それに、宿に着いてから経営者の方への挨拶の時に、頭も下げず、声もほとんど出さなかった子がいる。特に加奈、あなたの事を言っているんだからね。
それから、キャプテンすら靴を揃えないで部屋に入ったよね。
加奈と詩織、立ちなさい。」
立たされた加奈とキャプテンの詩織の顔は引きつっていた。
「加奈は剣道を初めてまだ半年にもならないよね。それなのに、挨拶すらきちんとやらないってどういう事?高1にもなって、挨拶の仕方が分からないの?」
「・・・・・・」
「何で黙っているの!?自分の言葉で喋りなさい!」
「す、すみ・ま・・せ・・・ん・・・」
「そんな小さい声じゃ聞こえないでしょ!帰りたいなら帰ってもいいよ!!」
私の怒号が飛ぶと共に、加奈の目からは大粒の涙がこぼれた。
私は構わず続けた
「帰るの?帰らないの? どっちか聞いてるの」
「帰りません、剣道を・・やらせて・・・ください」
「はっ!? 何で泣きながら言ってるの?悔しいの?」
「悔しいです・・・剣道を・・・やりたいです、やらせてください」
「そんな小さい声じゃみんなに聞こえないよ。前に出て来て言いなよ」
加奈は涙を拭きながら前に出て来た。
「剣道をやりたいです。やらせて下さい」
「声が小さい、泣きながら剣道って出来るの?強くなりたいの?」
「剣道がやりたいです、強くなりたいです、やらせて下さい」
今までの加奈とは違う、はっきりとした声だった。
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