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腐敗しつつある街を止めるためには、麻薬の断絶が必要不可欠だ。
早期の解決が望ましい。しかし、『上』に提案しても、『上』は聞く耳を持たなかった。
私はそれが、麻薬よりも、現在進行形で起きてる犯罪に手一杯だから、だと思っていた。違った。
麻薬を売買してる者、それを街にばらまいている者。
「ったく、困るぜ。ちゃんと彼らの面倒見ててくれなきゃよぉ」
「すまない。私の過失だ」
「喋るなと言ってるのが聞こえないのか!」
「小林君。標準は一人に絞らないと隙が生まれるよ」
「……」
小林は答えない。その代わり、標準は指示通り、スキンヘッドの男に定めた。
犯罪者のアドバイスを素直に受ける。本来なら叱責する場面なのだろうが、今夜は致し方ない。
何故なら、犯罪者は小林の──我々の上司なのだから。〇〇警察署の署長。
麻薬があまりにも出回り過ぎている。その事実に、私の長年積み重なった勘が、警察関係者の匂いを嗅ぎ取った。それも、権限のある『上』の存在を。
「署長。どうしてあなたがこんなことを?」
部下達がしっかり銃口を男達に向け動きを抑制しているのを確かめ、私は問うた。問わずにはいられなかった。
警察組織という、絶対的な正義を裏切った理由を。署長が私には向ける。
私の背後の光量で、目をすがめた。それはまるで、『善』から逃げるかのように。
「白井君。いや、白井警部」
階級で呼び直す。敬意を表しているようにも、愚弄しているようにも受け取れた。警察という組織に対しての、愚弄。
「君も、『そこ』にいて薄々感じてるんじゃないかな。この街は腐ってると」
「あなたが、そうした」
「いやいや違うよ、そうじゃない。この街も、世の中も昔から腐ってる」
親が子を諭すような、滑らかで静かな口調。『悪意』を微塵も感じていない証拠だ。
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