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「白井君。何度も言うが、君は出来損ないだ」
「……」
「器用にも、不器用にもなれない警官は、邪魔だ」
首が動く。周囲を見回す。十数の銃口が私を捉えていた。
「いっ……あっ……」
言葉にならない言葉が、呆然と洩れる。状況を理解できない。いや、ひとつだけはっきりと理解できている事はある。
私は、罠にかかったのだ。
「器用に見て見ぬふりがをしていれば。不器用に気づかなければよかったか。君はどちらもできない。そんな部下を持って私は悲しいよ」
「はぁ……はぁ……」
息が、露骨に荒くなる。
「先程言ったことは訂正しよう。警察官だというのに罪を犯すのではなく、警察官だから罪を犯すんだ。犯罪のなくならない世の中で正義を掲げ続けるのは苦痛だ。逃げ場が欲しくなる。ある者は女に、ある者は金に、ある者は犯罪に。ここにいる 『私』の部下はそれらに逃げたんだ」
あぁ……私は、上司だけでなく、部下にも見捨てられていたのか。全ては、滑稽な独りよがりだったのか。いや、なら彼らは?
「彼、らは……」
「君と同じ人種だ。だから、私の部下にはいらない」
〇〇警察署。そこはもう、犯罪者の巣窟だ。そんな場所に身を置いていた自分に吐き気を催す。
「小林君」
「はい」
小林は、私に一瞥もくれる事なく、銃を手渡した。銃口が私の心臓に向けられる。ほぼ、ゼロ距離。外す方がおかしい。
「白井警部。君の代わりはいくらでもいる。安心して、逝きなさい」
パンッ!!
体に強い衝撃が走ったのは、ほんの一瞬だった。痛みを感じないほど、神経が死んでいく。
自分の血飛沫が目に入った。全ては私を亡き者にするために仕組まれた会合だった。
薄れゆく意識の中で、私は確かに、スキンヘッドの男が上体を起こしていくのを目にした──。
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