拝啓

2/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 拝啓。  何度でも言おう。  私は、一刻も早くこの女との物語に終いをつけたい。  もし、これが私が認(したた)めた手紙なら、とっくに書くのをやめていることだろう。ただ、最初にことわっておくが私はこの女のことが嫌いというわけではないのだ。むしろ、人間として見れば多少なりとも好ましいと思える一面もある。  だが、一人の郵便配達士として、バディとして同じ仕事をこなすのは、ゴキブリが顔に飛来する程の嫌悪感を覚える。  まぁ、私自体ゴキブリに恐怖はないので分からんが。記憶上、モンスターに殺されそうになった人間より、こちらの方が悲鳴も表情もよっぽど絶望感があったので、例として使用したまでだ。  立派な郵便配達士というものは、立派に我々使い魔(ファミリア)を使いこなすもの。それが一人前の条件でもあるというのに、私のゴキブリ――。  失礼。口が滑ってしまった。  私の相棒はどうやら、使い魔を使役するのに必要である魔力を、産まれた時に母親の腹に忘れてきたらしい。 「セッちゃぁぁぁぁん!」  ――あと、名付け親としてのセンスもな。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!