拝啓

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 私は、その強さもさることながら、身の振る舞い方も実に紳士であると自負している。  特に、女性を相手にさせれば私の右に出る者などいないだろう。忙(せわ)しい午前でも、上質な珈琲で優雅に過ごせる店を知っている。昼下がりには、行きつけの場所で素晴らしい景色を愛でながらのアフタヌーンティー。そして、ヴィンテージもののワインと夜景で上機嫌になったところを、ベッドで仕上げだ。  そんな私が、今やたった一人の女に振り回されている。  しかも何なのだその呼び方は。犬か私は!  ――失礼。私の名はセバスチャン。うむ、実に紳士的な名前だ。  名前だけではない。普段から、いつ誘いが来ても対応できるよう、ダークスーツのブレザーにスラックス、革靴も忘れない。ただし、あまり堅苦しいのもよろしくないのでネクタイなどはしない。気軽なフォーマルで相手に気を使わせることもない。  清流を思わせる、うっすらと青みがかった細い髪も我ながら気に入っている。  ただ、最近少し伸びてきた気がするので、そろそろ整えようかと考えている。行きつけの美容室を予約しておかなくては。
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