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 青井助清(あおいすけきよ)。性別、男。16歳。高校2年生。  彼は2時限目の授業を終えた教室にて、自分の席に突っ伏し、机四つ分先に座る女生徒の結われた黒髪をぼーっと眺めていた。 (ああ……。姫。今日もステキな後ろ姿だ)  女生徒の名は“紫村咲姫(しむらさき)”。図書委員を努める真面目で物静かな助清のクラスメイトである。  咲姫はいつものように眼鏡のレンズ越しに映る小さな文字を上から下へと追っていた。 (一体何の本を読んでるんだろう。タイトルが分かれば僕も読んで話せるきっかけにするのに……)  話した事は一度も無い。席が隣同士になった事も同じ掃除の班になった事も目が合った事すら無い。 (……いや。話すなんておこがましい。こうして遠くから見ているだけで充分。それ以上は求めちゃダメだ)  だが助清は満足だった。手の届かないところから最愛の人を眺めているだけで幸せだった。  しかしその幸せも、ある日を境に狂いだす事になるとは、あれこれ妄想するのに忙しい助清には想像する余地も無かった。
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