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ある日、絵を描く授業があった。
校庭の好きな場所を選び、好きな景色の絵を描く授業だ。
私には景色を好きになるという感覚がわからなかったが、絵を描くことは好きだったので、校庭の坂になっているところに座り、真っ赤な空と真っ黒な校舎の絵を描くことにした。
そのとき、花の子が私の右斜め下に友人たちと共に座った。
そして、私と同じ景色の絵を描き始めた。
青い空と白い校舎の絵だった。
「へんなの」
私はつい口を滑らしてしまった。
だって、私の見える景色とは違う。気持ちの悪い絵だと思ったからだ。
そして、その声は花の子の耳に届いてしまった。
彼女は私のほうを振り向き、ゴミでも見るような目を向けた。
その目はあのときの目に似ていた。
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