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「…なあ、ガキ。生きてんのか?」
いつもの様に見回りをしていると、生い茂る木々の下、草の褥に横たわる少年を見つけた。
『…。』――返事はない。
正直なところ、あまり関わり合いにはなりたくなかったが、その面影にまだ幼さを残す者を見捨てるというのは、少々気にかかった。
ざっと見たところ、物怪の類ではなさそうだった。
――仮に物怪だとしても、この地で私に敵うものはいないのだが。
しゃがみ込み、口元に手をやると、どうやら少年はまだ生きているようだった。
…このまま此処で死なれては、かえって物怪の類を呼び寄せるかもしれない。とりあえず、連れ帰って様子をみることにしよう。
ひとまず、川まで連れて行き、あちらこちらについた泥を落としてやる。途端に、擦り傷や切り傷が目立つ。
――何処から来たんか知らんけど、碌に飯も持たんと、えろう無茶する奴やな。
「…。」
何となく、見知った誰かと重なって、静かに苦笑を浮かべた。
「銀翅。ちっと、手ぇ貸してくれるか。」
川で汚れを落とした後、己の眷属に様子見を任せ、ひとりで家に戻ると。
「おや。何かあったのかい?」
珍しく、驚いたような表情を向けられる。
無理もない。私が銀翅の手を借りなければならない事象など、それこそ余程のことがない限り、あり得ないからだ。
「大したことやない。人手が足りんだけや」
「…というと?」
「あっちでガキ拾うたさかい、運ぶの手伝うて。」
「ほう。…ということだそうだ。少し行ってきてくれるかい?」
銀翅もあまり力仕事が得意ではない身だ。その役目は必然的に、銀翅の式神に回された。
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