-vana- 第1話 葵の葉

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*** 「…なあ、ガキ。生きてんのか?」 いつもの様に見回りをしていると、生い茂る木々の下、草の褥に横たわる少年を見つけた。 『…。』――返事はない。 正直なところ、あまり関わり合いにはなりたくなかったが、その面影にまだ幼さを残す者を見捨てるというのは、少々気にかかった。 ざっと見たところ、物怪の類ではなさそうだった。 ――仮に物怪だとしても、この地で私に敵うものはいないのだが。 しゃがみ込み、口元に手をやると、どうやら少年はまだ生きているようだった。 …このまま此処で死なれては、かえって物怪の類を呼び寄せるかもしれない。とりあえず、連れ帰って様子をみることにしよう。 ひとまず、川まで連れて行き、あちらこちらについた泥を落としてやる。途端に、擦り傷や切り傷が目立つ。 ――何処から来たんか知らんけど、碌に飯も持たんと、えろう無茶する奴やな。 「…。」 何となく、見知った誰かと重なって、静かに苦笑を浮かべた。 「銀翅。ちっと、手ぇ貸してくれるか。」 川で汚れを落とした後、己の眷属に様子見を任せ、ひとりで家に戻ると。 「おや。何かあったのかい?」 珍しく、驚いたような表情を向けられる。 無理もない。私が銀翅の手を借りなければならない事象など、それこそ余程のことがない限り、あり得ないからだ。 「大したことやない。人手が足りんだけや」 「…というと?」 「あっちでガキ拾うたさかい、運ぶの手伝うて。」 「ほう。…ということだそうだ。少し行ってきてくれるかい?」 銀翅もあまり力仕事が得意ではない身だ。その役目は必然的に、銀翅の式神に回された。
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