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「悪い、遅くなった! って、まだ全然詰めてねーし」 早足で入って来て横まで来ると、まだほとんど何も進んでいない手元を見ての第一声。 少し息があがっていて、慌ててきたのが分かった。 もたもたしてた訳ではないけれど、 籠に、詰めるとこまでやっておくように指示されたことが出来ていないから、言い訳もできない。 「すみません…」 小さな臓器の入った4センチ×3センチ×5ミリ程の大きさの四角いプラスチックケースを専用の籠に並べるだけの事前作業だが、機械にセットする為の専用の籠だから、ピッタリに隙間なくの並べる必要がある。 詰めているのを、横でじっと見られている視線を感じつつ、慌てて作業を続ける。 パズルのような単純作業だが、やっと1つだけ籠いっぱいに詰め終わったものの、バケツにはまだまだ大量に、今日機械にセットする分が残っていて、 2つ目の籠詰めに取りかかろうとしたところで、山崎も横で、私のバケツのものを籠に並べ始めた。 たぶん待ちきれずに見兼ねて手伝ってくれたのだろうが、そのスピードの違いに圧巻。 トランプのように綺麗に片手に重ねて並べて、籠に一気に詰めていき、あっという間に1籠に詰め終わった。 「早っ!」 思わず目を見開いて口に出すと、 「遅っ!」 すぐに怪訝な顔で言い返された。 後ろで、包埋作業を初めている苅部さんから、 ケラケラ… って笑う声が聞こえた。 体半分だけ振り返ると、苅部さんは、背中を向けて作業しているから、顔は見れなかったけれど、代わりに廣瀬さんと目があった。 マスクしていて、表情は読み取れなかったけれど、ガッツポーズをしたから、 頑張れ って言ってくれたのだと勝手に解釈して、軽く会釈だけして、また慌てて作業を再開した。
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