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4人並んで立てるほど広いシンクなのに、 一つのバケツに手を伸ばして、隣同士で籠に詰める作業をして、 時々肘がぶつかる程の距離感で、 山崎との距離に、いちいちドキドキさせられる。 勝手に意識してるのが自分だけなのも悔しいし、意識してるのがバレるのは、もっと悔しい。 「上司が嫌いでも辞めんなよ」 そう言って、昨夜、触れられた感覚がフラッシュバックする。 だいたい、言ってることと、シチュエーションがミスマッチすぎるんだ。 仕草と言葉が一致していないから、全然意味がわからない。 顎グイ?? なんて、キスする時しか、やっちゃ駄目でしょ。 一瞬、キスされるんじゃないかって、 一瞬でも、ドキっとさせられてしまったなんて、絶対言えない。 一人で意識しちゃって、馬鹿みたいだ。 朝から何も変わらない態度に、何の意味もなかったのだと言われてるようで、 顔が火照りそうになるのを必死に記憶から排除しようと、 少しでも早く作業できるように手元に意識を集中させた。
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