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正面で、上から私を見下ろす視線が何を思っているのか、読み取ろうと見上げても、表情からは掴めない。 何か言わなきゃ、そう思っても身体は、固まって、声さえでないほど緊張していた。 私を見下ろした表情が、何か言いたげな表情に見えるのは、 私が何かを期待しているからで、 何かを欲しがっている表情に見えるのは、 それは私が何かを欲しがっているからだろう。 「明日の朝一、一緒に機械動かすから。早く片付けて…今日はもう帰るぞ」 いつも通りの低いトーンで、沈黙を破った山崎の声は、期待するだけ無駄だってことを知らしめてきた。 「はい…」 「ここキャビネット使っていいから」 並べたバケツを保管庫のキャビネットにしまってくれる姿を、身動き出来ずに眺めては、 バケツを持ちあげる腕の筋肉さえも、男らしくて、かっこいいって思ってしまうなんて、今怒られたばかりなのに、そんなこと思うなんて、やっぱり私はおかしいみたい。 あっと言う間にバケツを片付け終わると、 さっきから身動き出来ずに椅子から離れない私を見下ろして笑った。 「フッ(笑)腰でも抜かしたの?」 「…っあ、すみません。全部片付けさせてしまって…すみません」 「…出すように指示したの俺だから。 中川、そう言う時は、ありがとうって言うの」 「…ありがとうございます」 怒ったり、優しくなったり、この人は、ジェットコースターみたいな男だ。
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